2022年10月16日日曜日

ジャズボーカルを習ってできるようになること


僕のスクールでは、ジャズピアノのほか、ジャズボーカルを教えています。

ジャズボーカルとは何か。

ジャズボーカルを習おうとする人のほとんどは「歌が上手くなりたい」という目的で教室の門をくぐっているのではないかと思います。

歌が上手くなりたいのであれば、ボイストレーニングもあるし、カラオケ教室もあります。

それらとジャズボーカルは何が違うのでしょうか?

もちろん、歌が上手くなるのは大前提です。僕の教室も発声から始めます。

僕は歌手ではありませんが、音楽の専門家なので、正しい発声ができているかどうかは聴けばわかりますし、どうすれば良いかもわかります。歌手の命である音程も同じです。

ジャズの勉強はここからです。

授業としては、とにかくレパートリーを増やしてゆきます。

ジャズには、スタンダード曲といわれる定番曲があります。

このスタンダード曲には、昔のヒット曲などのほか、ジャズプレイヤーがジャズを演奏するために作った曲などがあり、このスタンダード曲をおぼえてさえいれば、初めて顔を合わせた演奏家同士が一緒に演奏して楽しむことができます。

日本では、スタンダード曲の楽譜として、リットー・ミュージック社の「ジャズ・スタンダード・バイブル」のボーカル編です。「白本」と呼ばれ、よく使われています。この本には、123曲のジャズスタンダード曲が収録されており、シリーズ化もされています。


ジャズボーカルの授業では、そのスタンダード曲をおぼえてゆきます。

歌詞を音符にはめ込み、曲をおぼえます。

そしてそのとき、曲のキーを決めます。

自分がどの高さで歌えば一番歌いやすく、魅力的な声が出るのかを割り出し、その高さを自分のキーとして、音符とコードをキーに合わせて楽譜を作り直します。

この楽譜があれば、いつでもどこでも自分の歌いやすい高さで伴奏をしてもらえます。

そしていよいよ歌うのですが、そのとき、僕はそのときの気分でいろいろな伴奏をします。

習っているほうは歌うことに一生懸命なので、伴奏についてくるのも一生懸命です。そうしているうちに、どのような伴奏でも歌えるようになります。

この、どのような伴奏でも歌えるようになるというのがジャズのとても大事なところです。

なぜなら、ジャズは即興演奏の音楽だからです。

ジャズプレイヤーはメロディーとコードしか書いていない楽譜を見て、そのときの気分で演奏します。二度と同じ演奏をすることはありません。ですから、歌う人も一緒にそのときの気分を楽しみ、個性を楽しみ、刺激し合いながら演奏することになります。

・スタンダード曲があること
・自分のキーがわかっていること
・どのような伴奏でも歌えるようになること

この3つの条件から、ジャズは、初めて出会う人とでも一緒に演奏することが可能になり、コミュニケーションツールとして機能します。

即興演奏の技術を身につけ、スタンダード曲をマスターすれば、世界中のどこへ行っても、ジャズプレイヤーとコミュニケーションをとることができます。

世界中どこの町にもジャズライブハウスがあり、そこでセッションをしていれば旅行先で演奏を楽しむことができます。

知り合ったばかりの人とバンドを組んでライブすることも可能です。むしろ、ジャズはインスタントにバンドを作るほうが定番です。

演奏するたびに伴奏が変わるのは、想像よりもずっと歌いにくいものです。ですがそれに慣れると、音楽は言語としても機能しはじめます。世界中のジャズプレイヤーと、音楽で対話ができるようになります。

ジャズボーカリストになるということは、地球全体を薄く覆っている、ジャズの国のパスポートを手に入れるということだと思います。

僕は、どうせなら学校でも音楽の授業でちょっとだけでもジャズを教えて、日本中の子供達が全員セッションに参加できるくらいになったら面白いのではないかと思っています。

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