僕が結婚したのは58歳のときで、奧さんとは出会って11年になります。
奥さんは僕のことが気に入ってストーカーしたと言っていますが、僕から見ると、いつのまにかトコトコついてきて一緒にいるといった印象です。
僕は音楽で生きることにしていたので、50代に入るまで家庭を持つことは難しいと考えていました。
音楽に打ち込みながら家庭を支えることができるとはとても思えず、僕は、普通の人間の幸せと引換えに音楽家として生きるのかなと思っていました。
50代後半になって、教師としての生活が落ち着き、研究にも目処が立ってきたのでそろそろ結婚できるかなと思っていたところ、奥さんがやって来ました。
60近くで結婚したことのないミュージシャンなど結婚相談所に行ったら門前払いになる物件ですが、不思議と僕は、自分が生涯結婚できないという気はしていませんでした。
この「できないという気がしない」という気持ちは僕にとって鍵のようなもので、このように思えているうちは夢が叶います。
音楽を続けられたのもこの気持ちがあったからで、この気持ちがあっても叶わない夢だけが本当に叶わない夢だと僕は思っています。
結婚についてもできる気持ちでいたので、ああしようこうしようと頭の中で計画を立て、シミュレーションをしているうちに奥さんが来ました。
今の姿からは想像できませんが、当時奥さんはとてもスリムで、ヴィヴィアンウエストウッドやキャサリンハムネットを着こなして、煙草が似合いそうな、ミステリアスな雰囲気でした。
とても家庭に向いている人には見えませんでしたが、僕にはちょうどいいと思って一緒になりました。
結婚してみると、掃除片付けは苦手でしたが料理が上手で、非常に愛情が深く、家族を大切にしてくれる人でした。
僕の夢を現実にするためとあれば何でも出来るようになってしまう奥さんは、ライブの告知やCD出版のために独学でデザインを習得し、YouTubeでは人形を操り、グランドピアノを手に入れ、ウッドベースを手に入れました。僕の様子を観察して、田舎暮らしを勧めてきたのもこの奥さんです。
奥さんも「できないという気がしない」という気持ちされあれば何でもやってしまう人で、僕よりも暗示にかかりやすく、行動するとなると「思い立ったら吉日」で、僕の方が現実的なくらいです。
僕に対して「あなたは現実的すぎる」と言って怒ってくるのは奥さんくらいのものです。
相性のよさとはこういうことかなと思いますが、奥さんのほうは、
「私もあなたも片付けができなくて、気にはしても腹を立てないから相性がいい」
と言っています。
片方だけがきれい好きで、片方がいつも叱られたりしていると、確かにそれは何よりつらいと思います。
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