僕が田舎暮らしを始めたのは、自分の仕事をするために一番良い場所を選んでのことですが、もうひとつの理由は、防災のためでした。
僕が前に住んでいた阿倍野には、阿倍野防災センター(通称:阿倍野タスカル)があり、災害時のための備蓄倉庫であるとともに、災害時避難の啓発を行なっていました。
散歩のつもりでその防災センターに行ってみたところ、映画を見たり、資料を見たりしているうちに、都会にいては、災害にあうのも怖いし、それよりも、災害にあったあとが怖いと思うようになりました。
阪神大震災のとき、僕は猪名川町にいました。
猪名川町は被害の大きな場所ではありませんでしたが、それでも、ガスが止まったりしてとても困りました。
人の多い大阪で大きな災害にあうと、何もかもが回らない生活になります。
僕が住んでいた阿倍野は、防災マップを見ると比較的安全な場所でしたが、人が多く家も古く、ここで何かあって避難所での生活になったとき、年齢的にもとても耐えられないと思いました。
田舎で暮らせば、人数が少ないからというだけでも無事に過ごせるのではないかと考えと、また、自給自足に少しでも近づくことができれば、それだけ、安全に過ごせることになるのではないかという考えもあって、田舎暮らしをはじめることにしました。
実際に暮らしてみると、田舎の家は、悪く言えば不便で、よく言えば自由度が高く、独立を目指すことが難しくありません。
まず、ガスがプロパンです。
都市ガスに比べると高価ですが、家ごとに独立して供給されているので、災害に強いといわれています。
それから、僕の住む地域には下水道がありません。
引っ越して来たときに町役場に下水道敷設の予定はないか聞いてみましたが「ありません」とはっきり答えが返ってきました。
下水道のない地域では多くの家が浄化槽を利用するか、簡易水洗にしています。
僕の家は、住居にしているほうは簡易水洗ですが、お店のあるほうのトイレが汲み取り式ののままです。
これを水洗にするのは簡単ですが、災害時は水洗だと却って不便になるかと思い、実験的に、バイオトイレにしています。
普通のバイオトイレは電気式で温度管理をしたり、電気または手動でかきまぜたりしていますが、僕の家のトイレは、奥さんがナルナル菌というものを見つけてきて使っています。
このナルナル菌のバイオトイレは、米ぬかと籾殻を乗せ、あとは籾殻を足してゆくだけで良いというものです。
使いはじめて2年以上経ちますが、成功していると思います。
このバイオトイレは、被災地などに置けばとても助かるのではないでしょうか。
それから僕は、薪ストーブを買いました。
家の中に置く薪ストーブは、煙突などの設置と併せてとても高価になるので、庭で使う薪ストーブです。これで暖まることもできますし、料理もできます。
僕は知り合いに作って貰いましたが、家の中でなければ、アウトドア用の薪ストーブで充分だと思います。
特に吉野は木材の町なので、薪が手に入りやすいようです。
僕の近所も家のお風呂を薪で焚いている家がいくつかあるのではないかと思います。
水は、上水道のほかに井戸水もあります。
あと必要なものはソーラーと電源でしょうか。
こうしてひとつひとつ考えてみると、都会はインフラが整備されていて便利ですが、出来上がったシステムの中にいることになるので、イレギュラーにとても弱いような気がします。
もしかすると、今は技術がさらに発展していて心配事は減っているのかもしれませんが、ひとまかせにするものが多ければ多いほど、そこが弱点になってしまうのではないかと感じています。
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